コロナワクチン、おたふくかぜワクチン
おひさまこどもクリニック
2021年5月27日12時放送
0.コロナワクチンはいかがですか?
感染予防や患者さんの治療など守りも大事ですが、攻めに転じてコロナとの戦いに勝つ唯一の方法がワクチン接種です。7月中に高齢者を終わらせるのが目標です。鹿屋市では5月15日土曜日から毎週末に集団接種が始まりました。17日月曜日からかかりつけの医療機関での個別接種も始まりました。当院には、高齢者のかかりつけはいませんので、かかりつけには拘りませんが、設備の都合上、介助が必要な成人はお断りしています。重い持病やアナフィラキシーの既往がある方はかかりつけで受けてください。混雑回避のため、予約はネット限定です。24時間受け付けしています。また、高齢者に限らず、おひさま公式アカウントのラインともだちになると、ワクチンが余った時に、「すぐに来院できる人はいませんか?」と補欠募集します。予約が取れていない16歳以上はどなたでも、接種券がなくても保険証と鹿屋市・肝付町・東串良町の住所を確認できる書類があればOKです。
1.おたふくかぜワクチンが足りないと聞きましたが？
はい、日本では2社が製造していますが、年内は1社しか出荷できなくなりました。おたふくかぜは正式には流行性耳下腺炎といいます。4−5年周期で全国規模の大きな流行を繰り返しており、2016年に大きな流行がありました。昨年・本年はコロナの影響なのか患者数は少ないですが、今後再び増加する可能性があります。
2.感染の原因や治療法はどうでしょうか？
おたふくかぜウイルスが、患者の咳やくしゃみによる飛沫や患者との接触で人から人へ感染します。潜伏期間は2−3週間程度です。感染力が強いですが、不顕性感染といって感染しても症状に気づかない人が30％程度います。症状が無くても感染源になるため、症状のある人だけを隔離しても流行を防げません。おたふくかぜに有効な薬は無く、症状をやわらげる対症療法で回復を待ちます。感染力が強く治療法が無い訳ですから、予防接種を是非受けて欲しいです。
3.耳の下が腫れたら、おたふくかぜと考えて良いですか？
はい、可能性があります。片方または両方の耳の下の痛みと腫れが2日間以上続き、かつ、他に原因がなければおたふくかぜを疑います。
「周囲におたふくかぜの流行があり、両方の耳下腺腫脹のため顔が一回り大きくなり、熱や痛みがあり、1週間で腫れが引く」といった、典型的な症例では、症状だけで診断することもできますが、実際には診断が難しい症例が多いです。一度かかったと思っていたら、数年後にまた耳下腺が腫れる場合もあり、どちらがおたふくかぜだったか分からなくなる事もあります。
4.意外に診断が難しいのですね？
まず、腫れているのは本当に耳下腺なのかどうか、確認が必要です。耳の下から下顎の骨の輪郭に沿うように硬く腫れて痛みがあれば耳下腺の可能性が高いです。耳の後ろや顎の下、首の横など、実際に診察すると耳下腺でなくリンパ節が腫れている事があります。また、おたふくかぜでも耳下腺の腫脹は軽度で、顎の下の顎下腺の腫れが目立つおたふくかぜもあります。耳鼻科医や小児科医が診察しないと診断は難しいです。診断の確定には血液検査が確実です。
5.おたふくかぜではない耳下腺炎もあると言うことですね？
はい、反復性耳下腺炎といって、片方または左右交互に繰り返し腫れる病気もあります。これは自然に改善します。虫歯で顎が腫れている場合もあります。リンパ節炎・扁桃炎・中耳炎による痛みかもしれません。高熱が続く川崎病も首のリンパ節が大きく腫れると、おたふくかぜと紛らわしいことがあり、注意が必要です。川崎病は、全例が入院になります。
6.おたふくかぜの合併症はどうでしょうか？
おたふくかぜは軽い病気と思われていますが、実際には合併症が比較的多いです。
かかりはじめの数日間の急性期には、高熱、頭痛、嘔吐に注意が必要です。これは髄膜炎の症状で、100人に1人程度と言われています。また強い腹痛がある場合は急性膵炎かもしれません。髄膜炎や急性膵炎は入院になる可能性が高いです。他に精巣炎や卵巣炎を起こすことがありますが、不妊症になる確率は低いと言われています。
回復期の合併症として、一番問題になるのは難聴です。片方または両方の耳が一生聞こえなくなります。1000人に1人またはそれ以上の高い頻度と言われています。回復期の1か月程度は、小さい音がちゃんと聞こえているか注意が必要です。耳の側で親指と人差し指を擦り合わせて、左右それぞれの耳の聞こえをチェックするのが簡単です。おたふくかぜ難聴は人工内耳の埋め込み手術以外に治療法がなく、手術しても聴力が完全に正常に戻る訳ではありません。唯一の予防法がおたふくかぜワクチンの接種です。
7.一度かかったら、免疫は一生続くのですよね？
はい、通常はそう考えてもらって良いですが、先程言いましたように、おたふくかぜは診断が難しく、おたふくかぜの診断が100％正しいとは限りません。典型的でない症例は、血液検査を受けた方が良いです。「耳下腺から出る消化酵素であるアミラーゼが上昇し、かつ、おたふく抗体価が高いこと」が確認できなかった例は、後日、おたふくかぜの予防接種を受けることをお勧めします。
8.保育園や学校は何日くらい休んだら良いですか？
症状が出始めた日を0日として、最低5日間は休むことになっています。少し腫れが残っていても、痛みがなく元気で食欲があれば、集団生活できます。必ず、医師の診断を受けてから登園・登校してください。
回復期は難聴に注意することも忘れないようにしてください。
9.最後に、おたふくかぜワクチンについて教えてください。
おたふくかぜは感染力が強く、難聴などの合併症が多く、治療法のない病気ですので、予防接種を受けることが大事です。外国では2回から3回の定期接種が公費で行われています。
日本でも、1980年代にMMRワクチン(麻しん風しんおたふくかぜ混合ワクチン)として定期接種が実施されたのですが、副反応による髄膜炎が数百人に1人と多かったため中止されました。現在のおたふくかぜワクチンによる髄膜炎の頻度は10万人から100万人に1人とされており、安全性が高く効果もあるため、小児科医達は、早く定期接種にしてくれるように、国に要望しています。
具体的な接種法ですが、1歳以上で2回接種することが勧奨されています。麻しん風しん（MR）ワクチンなどと同様に、1回接種では十分な免疫が付かないことがあるためです。1歳になったらすぐに、MRや水痘などと一緒におたふくかぜワクチンを受けましょう。3年から5年後に2回目を推奨されています。年長さんになったらすぐにMRとおたふくの2回目を受けると覚えてください。
自費ワクチンのため、費用は医療機関ごとに違いますが、1回あたりおよそ5000円から8000円程度です。一部の町では助成金があります。まだ、受けていない方、あるいは、おたふくかぜにかかったかどうかわからない方は、是非受けましょう。大人も受けることができます。