学校給食と食物アレルギー

おひさまこどもクリニック

2020年5月28日12時放送


食物アレルギーのあるお子さんは、学校生活管理指導表という診断書兼指示書を学校に提出して、給食などの対応をしてもらうことになっています。今日はそのことについて、お話します。

１，食物アレルギーとは？
食物を接種した後、口唇・口囲の発赤、口腔の違和感、じんま疹などの反応が見られる事があります。同じ食品で同じ反応を繰り返すなら食物アレルギーかもしれませんね。
食べてすぐに反応するタイプを即時型アレルギーと言います。多くは食後30分以内で、遅くとも2時間以内に反応があります。症状が強ければ、担当医から食餌制限を指示されます。
特に、全身のじんま疹、気分不良、咳・喘鳴、嘔吐下痢、意識障害など全身に強い症状があるものをアナフィラキシーと言い、まれに命に関わる事があるので注意が必要です。
即時型であっても軽症の場合は食餌制限不要の事があります。また、即時型でなければ、つまりある食品を食べて、翌日になって湿疹の痒みが増えたからといって、食事制限をする必要はありません。


２，どうやって診断するか？
勘違いや思い込みで不必要な制限をしている方が少なくありませんので、何よりも、詳細な問診が重要です。
疑われる食物の加工食品を知らずに食べて全く症状がない場合は、食物アレルギーではない可能性があります。食餌日記を1−2週間記録すると、非常に有用です。
問診から食物アレルギーが疑われ、血液検査でも同じ異常があれば食物アレルギーの可能性が高くなりますが、血液検査で異常があっても食物アレルギーではない場合もあります。診断の確定のため、皮膚のテストや食物負荷試験を行うことがあります。明らかなアナフィラキシーの既往があれば食物負荷試験を省略する事があります。

皮膚のテストは実際に疑わしい食品を使って皮膚の発赤や腫脹などを調べます。食物負荷試験は少量の食物を実際に食べさせて反応を見ます。危険が伴いますので、看護師が半日つきっきりになります。


３．不必要な食物制限に注意
学校などから血液検査を勧められて来院する症例が多いですが、血液検査の過信は禁物です。実際には即時型反応が見られない食品でも血液で異常があるからという理由で制限している方があります。
不必要な食事制限が原因で、本当にその食品が食べられなくなることがあります。また、栄養のバランスが悪いだけで無く、家族の人間関係にまで悪影響することがあります。
命に関わるという明確な理由があれば、本人も周囲も充分に納得できるでしょうが、曖昧な理由による制限は、食べ物の恨みにつながるかもしれません。

４．家庭と学校では対応が違う
学校給食をつくる現場でどこまで除去食に対応できるかが一番のポイントです。
教室では特定の児童生徒にだけ担任の先生がつきっきりになるのは難しいと思われます。
学校現場では、疑わしい食品にチャレンジすることは難しいと思われますので、どこまで制限するかを明確にする必要がありますし、家庭よりも厳しい制限にならざるを得ない事情があると思われます。
一方、家庭では、疑わしい食物を少量含む加工食品を少しずつ食べさせて反応をみることができます。詳細な手順を担当医と相談してください。その結果、翌年は学校でも食事制限を解除できるかもしれません。

５．食物依存性運動誘発アナフィラキシー
症例数は少ないですが、普通に食べても症状はないが、特定の食品を食べた後、2時間以内に激しい運動をしたときに限り、急性じんま疹や嘔吐、気分不良、喘鳴などのアナフィラキシー症状がみられる症例があります。原因食品が分かっている場合は、給食後の昼休みの運動や、5時間目の体育など制限が必要になることがあります。


６．エピペン
アナフィラキシーの診断がついた患者さんには、アドレナリン自己注射のエピペンが処方されることがあります。
学校の先生方も研修を受けるなど、アナフィラキシーへの対応は以前よりも理解が深まっている思われます。処方されたら、本人、保護者、担任、養護教諭で、緊急時の対応について話し合ったり、必要があれば、主治医の助言を受けるようにしてください。

インターネットでメーカーがわかりやすい説明を提供しています。エピペンにはトレーナー（練習用注射器）が入っていますので、毎月定期的に練習してください。


７．学校生活管理指導表の適正化
2018年度から食物アレルギーの学校生活管理指導表作成の適正化に取り組んでいます。同年度の指導表提出は136名でした。このうち72.5％が2019年度に提出不要(管理不要)となりました。給食センターや教室での管理の負担が軽減され、本当に必要な児童生徒への対応を適切に行える環境が整いつつあると思われます。