こどもの便秘（おおすみFMネットワーク放送分より）

　Q1．便秘のこどもって多いのですか？

驚く程多いです。ご家族が便秘の認識がない例もあります。日本の正確なデータはありませんが、10人に1人以上のお子さんが便秘ではないかと考えられます。


　Q2．どのような状態を便秘と言うのでしょうか？

正常の排便回数は、少なくとも一週間に3回以上です。
1日に3回から5回排便があっても正常範囲です。
排便が一週間に2回以下であれば便秘と考えて良いと思われます。

また、
一週間に3回以上の排便があっても硬い便によって腹痛や肛門の痛みや出血が見られるなど、排便に伴う苦痛があるなら便秘と考えられます。

トイレが10分以上と長かったり、便を我慢するようなしぐさが見られたり、たまに便器が詰まるような太い便をするのも便秘の症状です。また、肛門に見張りイボというヒダのようなものがあれば、硬い便による切れ痔の症状かもしれません。



　Q3．毎日便が出ていれば、便秘ではないですよね？

毎日排便があっても、少量ずつしか出ていないために直腸に多量の便が溜まっていることがあります。苦痛を伴わずにたっぷり出てスッキリ感があるかどうかが大事です。

楽に排便できる便の状態は
細めのバナナ状、または、形がやっとあるような軟らかい便です。



　Q4．こどもが便秘になりやすい時期がありますか？

離乳食開始後、トイレットトレーニング時期、小学校入学後などが多いです。


　Q5．便秘は遺伝するのでしょうか？

家族に便秘しやすい方があると、お子さんも便秘しやすい傾向があります。家族全員が便秘というご家庭もあります。
家族に便秘のかたがおられる場合は、子どもさんが便秘していないか注意して見守ることをおすすめします。


　Q6．こどもの便秘は治りますか？

便秘しやすい体質を完全に治すことは難しく、成人への持越しが少なくありません。一旦改善しても再発する例が多いです。しかし、早期発見早期治療により改善することはできます。離乳食開始後に便秘傾向に気づき、1歳以降で排便時に苦痛があり小児科に来院される例が多いです。できれば2-3歳までに排便リズムを安定させたいですね。


　Q7．こどもの便秘を放置するとどうなりますか？

腹痛、 不機嫌、食欲不振、睡眠障害、生活や学習への悪影響などが考えられます。
便秘の治療をすることで夜尿症が改善する例もあります。

慢性化して成人に持ち越さないようにすることが大事ですね。


　Q8．こどもが便秘を繰り返すのはなぜですか？

結腸から直腸に便が降りてくると直ちに便意を感じるのが正常ですが、日常的に排便が不十分で直腸に便が溜まった状態が続くと、直腸の反射が鈍くなります。さらに排便時の痛みや出血など嫌な経験から排便を我慢する癖がつき、便秘が悪化します。
こどもが足を交差させたりもじもじするようなしぐさは排便を我慢している可能性があります。


　Q9．治療の目標は？

便秘でない状態を維持することが目標です。
治療開始は、浣腸などで溜まった便を出します。そして内服で排便を維持します。少なくとも週3回以上の排便が十分量あり、排便に伴う苦痛がないことが大事です。

便が硬くて出ないよりは軟らかい便でも楽に排便できる方が良いです。水様便が１日５回以上あるなど明らかな下痢でなければ、ドロドロ便であっても本人が苦痛を感じないなら薬剤を減量せず治療を継続してください。便秘治療中に偶然嘔吐下痢症になったら、便秘薬を一時中止することがあります。

排便記録：日々の排便の状態を把握し主治医に適切に伝えるために排便記録の記載をお願いしてします。


　Q10．便秘の治療に薬を長く使うのは心配なので食事で治せませんか？

食物繊維の多い野菜やイモ類、ミネラルの多い海藻類などを多目にとるのは良い事です。脱水でない限り水分を多くとっても便秘改善の効果は期待できません。適度の運動も大事ですし、早寝早起きの規則正しい生活は何よりも基本です。

しかしながら、便秘そのものが癖になりやすいものであり、便秘しやすい体質を変えることは簡単ではありません。
中途半端な治療を繰り返すことで症状が悪化すると、薬剤が原因であったかのように誤解されることがあります。
酸化マグネシウムは便を軟らかくして排便しやすくする内服薬ですが、野菜や海藻類にも含まれる成分であり、小児に安心して長期間使うことができます。ご希望があれば漢方薬を使うこともできます。

おひさまこどもクリニック　 2015年9月28日