こどもの便秘4

おひさまこどもクリニック

2024年4月25日12時放送


　Q1．こどもの便秘って多いのですか？
　驚く程多いです。ご家族が便秘の認識がない例もあります。日本の正確なデータはありませんが、10人に1人以上のお子さんが便秘ではないかと考えられます。


　
　Q2．どのような状態を便秘と言うのでしょうか？
　正常の排便回数は、少なくとも一週間に3日以上です。排便が一週間に2日以下は便秘です。また、一週間に3日以上の排便があっても硬い便によって腹痛や肛門の痛みや出血が見られるなど、排便に伴う苦痛があるなら便秘と考えて良いです。

　トイレが10分以上と長かったり、便を我慢するようなしぐさが見られたり、たまに便器が詰まるような太い便をするのも便秘の症状です。また、肛門に見張りイボというヒダのようなものがあれば、硬い便による切れ痔の症状かもしれません。


　Q3．毎日便が出ていれば、便秘ではないですよね？
　普通はそうなのですが、見落としやすい例外として、毎日排便があっても少量ずつしか出ておらず、実は便秘だったという事例もあります。例えば、宿題プリントが1日10枚あるのに、毎日8枚ずつしかやっていないと、5日後には1日分溜まってしまいますね。

　楽に排便できる便の状態とは、細めのバナナ状、または、形がやっとあるような軟らかい便です。苦痛を伴わずにたっぷり出て、毎日スッキリ感があるかどうかが大事です。

　
　Q4．こどもが便秘になりやすい時期がありますか？
　離乳食開始後、トイレトレーニング時期、小学校入学後などが多いです。離乳食が2−3回になった頃から便秘が始まったお子さんは便秘体質の可能性があります。


　Q5．便秘は遺伝するのでしょうか？
　家族に便秘しやすい方があると、お子さんも便秘しやすい傾向があります。家族全員が便秘というご家庭もあります。家族歴があるお子さんは便秘していないか注意して見守ることをおすすめします。


　Q6．こどもの便秘は治りますか？
　早期発見早期治療により改善することができます。離乳食開始後に便秘傾向に気づき、1歳以降で排便時に苦痛があり小児科に来院される例が多いです。できれば2-3歳までに排便リズムを安定させたいですね。


　Q7．こどもの便秘を放置するとどうなりますか？
　腹痛、 不機嫌、食欲不振、睡眠障害、生活や学習への悪影響などが考えられます。便秘の治療をすることで夜尿症が改善する例もあります。慢性化して成人に持ち越さないようにすることが大事です。

　直腸に多量に溜まって栓をした状態の硬い便の周囲を液状の便が流れる「オーバーフローの垂れ流し状態」は便秘の究極の状態です。1日中便の匂いがします。全身麻酔下に硬い便を崩したり、広がった直腸を縫い縮める手術など入院治療が必要になる事があります。


　Q8．こどもが便秘を繰り返すのはなぜですか？
　直腸は普段は空っぽです。結腸から直腸に便が降りてくると直ちに便意を感じるのが正常です。日常的に排便が不十分で直腸に便が溜まった状態が続くと、直腸の反射が鈍くなります。さらに排便時の痛みや出血など嫌な経験から排便を我慢する癖がつき、便秘が悪化します。こどもが足を交差させたりもじもじするようなしぐさは排便を我慢している可能性があります。



　Q9．薬を長く使うのは心配なので食餌で治せませんか？
　水分を多くとっても尿が増えるだけで大腸に溜まった便を柔らかくする事はできません。食物繊維の多い野菜やイモ類、ミネラルの多い海藻類などを多目にとるのは良い事です。適度の運動も大事ですし、早寝早起きの規則正しい生活は何よりも基本です。
　しかし、食餌療法だけで治すのは困難な症例が多いです。


Q10．治療薬にはどんなものがありますか?
　大腸を動かす刺激性の便秘治療薬は依存性がありますので長期間の使用はお勧めできません。依存性とは長期使用により次第に効き目が弱くなり、より大量の薬剤が必要になる事です。
　酸化マグネシウムには依存性がありません。便の水分を増やし軟らかくして排便しやすくします。ナッツ類や海藻類にも含まれる成分であり、小児にも安心して長期間使うことができます。
　　酸化マグネシウムの効果が安定しないお子さんには、ポリエチレングリコール製剤を処方します。便中に水分を取り込む作用が強力です。2歳以上に適応があります。


Q11．治療の目標は？
　便秘でない状態を維持することが目標です。はじめに浣腸で溜まった便を出します。そして内服で規則正しい排便を維持します。少なくとも週3日以上の排便が十分量あり、排便に伴う苦痛がないことが大事です。

　便が硬くて出ないよりは軟らかい便でも楽に排便できる方が良いです。水様便が１日５回以上あるなど明らかな下痢でなければ、ドロドロ便であっても本人が苦痛を感じないなら薬剤を減量せず治療を継続してください。便秘治療中に嘔吐下痢症などになったら、便秘薬を一時中止する事があります。

　排便記録という日記を差し上げています。日々の排便の状態を主治医に適切に伝えるために毎日記載をお願いします。　便秘をこじらせない・長期化させないために、焦らず気長に治療しましょう。