ヒトメタニューモウイルス感染症

2022年11月24日12時放送

おひさまこどもクリニック


1)ヒトメタニューモウイルスって何ですか？
　風邪症状の原因ウイルスの一つです。風邪症状の原因ウイルスは多数ありますが、代表は、ライノ、アデノ、コロナ、インフルエンザ、パラインフルエンザ、RS、ヒトメタなどです。現在、全国的にヒトメタによる風邪症候群が流行していますので、風邪症状がありコロナ検査が陰性の小児はヒトメタの可能性が高いです。


2)ヒトメタはどんな症状を起こしますか？
　熱、咳、鼻汁などが主な症状ですが、RSウイルスと同様に低年齢ほど症状が強く、高い熱、酷い咳に加えて、喘鳴(ゼーゼー)があれば細気管支炎と診断されます。肺炎を起こすこともあります。

　RSウイルスによる細気管支炎は酸素吸入や脱水の治療のため入院になる事が多いですが、ヒトメタはRSウイルスよりは入院の確率が低い傾向があります。

　年齢に関係なく感染しますが、繰り返し感染する事で免疫がつきますので、年齢が上がる程症状が軽くなる傾向があります。


3)細気管支炎の症状は？
　空気の通り道である気管が左右に別れて気管支となりさらに分岐をくりかえして数万本の直径1mm以下の細気管支になります。

　この細気管支が炎症を起こすと、狭い管をようやく空気が通るために、ゼーゼーと音がします。これを喘鳴と言います。喘息の「喘」に笛が「鳴」ると書きます。

　細気管支炎はいろんなウイルス感染症で起きますが、代表的なものはRSウイルスとヒトメタウイルスです。

　症状は喘息発作に似ています。ひどい咳や喘鳴が特徴で、熱が高いことが多いです。初めから発熱することもありますが、咳で始まって、徐々に症状が強くなり発熱することもあります。

　とくに乳児では呼吸困難を起こしやすく酸素吸入が必要になることがあります。新生児では突然の無呼吸発作を起こすこともあり注意が必要です。

　機嫌や顔色、哺乳や食欲、睡眠などは重要な指標です。簡単で客観的な指標として、呼吸数があります。1分間に30回以内が正常、50回以上は呼吸困難あり、60回以上は酸素吸入や入院が必要かもしれません。生後半年未満は入院率が高く、低年齢ほど入院を念頭に診療しています。


4)診断は？
　潜伏期は4−6日程度です。熱・咳・喘鳴などの症状が強く、年齢が小さいなどの理由で重症化の可能性が高い場合、インフルエンザやRSウイルス検査のように鼻から綿棒を入れて検査します。8分から15分程度で結果が分かります。

　他の迅速診断と同様、陽性には意味がありますが、ヒトメタウイルスに感染している人全員が陽性になる訳ではありません。「ヒトメタウイルスではないことを証明するために行う検査」ではありません。

　本来、肺炎が疑われる6歳未満の小児にしか保険適応がないうえに、現在検査キット不足で入手できませんので、症状から診断しています。


5)予防方法はありますか？
　ワクチンはありません。COVID-19の予防策がそのまま活かせます。
　飛沫感染ですので、患者さんから2m以上離れると感染しにくくなります。咳のある人はマスクをして周囲にウイルスを飛ばさないように咳エチケットが大事です。2歳未満は呼吸がしづらくなるのでマスクはお勧めしません。唾液や鼻汁に多量のウイルスがいますので、手洗い、アルコールや塩素系の消毒薬も有効です。


6)ヒトメタウイルス感染症の治療法は？
　インフルエンザのような特効薬はありません。ウイルスですので抗生剤も無効です。毎年のように繰り返し感染することで免疫が強くなるので、年長さんや成人は感染したことに気づかずに治ることが多いです。しかし、初めて感染した乳児は免疫が無いので重くなることがあります。

　熱、咳、喘鳴などのある乳幼児は治療の対象です。咳痰や喘鳴を和らげる治療(対症療法)を行います。呼吸困難や脱水があれば入院して酸素投与や点滴などを行います。

　月齢が小さいほどハイリスクですが、2-3歳でも日頃から喘息傾向のある幼児は悪化しやすい傾向があります。高熱が続く場合は肺炎を合併している事があります。


7)集団生活などの注意は？
　発病から3-4日目が症状のピークで、1週間程度で軽快することが多いので、集団生活は1週間程度休んでもらうことになります。登園に際して医師が記載する意見書は必要ありませんので、保育園や幼稚園の先生方は、ご理解くださるようにお願いします。

　一度の感染では免疫は不完全のため、流行のたびに、何回も感染を繰り返します。年長児や大人が感染しても症状が軽く、知らずに乳児にうつしてしまうことがあります。保育園などでは、咳の多い年長児や職員が乳児と接触しないように注意し、流行期は1歳未満児と1歳以上児を同じ部屋にしないようにしてください。

　治った後も風邪を引くたびに喘鳴を繰り返しやすくなることがあります。喘息体質のお子さんは症状が悪化しやすく長引く傾向があります。成長に伴って体力がつけば次第に改善します。

　定期予防接種等は治癒を確認後、1-2週間程度様子を見てから接種します。