夜尿症について2
2017.6.22
おひさまこどもクリニック


ワンダフルチャレンジ
おひさまこどもクリニックの時間の第1回で夜尿症を取り上げてから2年余りが過ぎ、
本日は第27回の放送となります。昨年、夜尿症ガイドラインが改定されましたので、
再度、夜尿症について、ご説明したいと思います。


１．定義(おねしょと夜尿症はどう違う？)
乳幼児のおねしょはよくあることですが、医学的に病的と考えられるものを夜尿症といいます。国際学会では、5歳以上で1か月に1回以上の夜尿が3か月以上続くものと定義されています。
　夜尿症の頻度は、5−6歳で20％、小学校低学年で10％台、高学年で5％前後、中学生で1−3％に減少しますが、成人でもまれにあります。

　排尿機能の発達が未熟な状態と考えられ、ほとんどの場合、家系に遺伝があります。おねしょとは異なり病気の一種と考えられており、適切な対応が必要です。


２．医療機関受診の目安
・4歳未満はおねしょの頻度に関係なく、規則正しい生活習慣を大事にしましょう。
・5歳以上になっても夜尿が続く場合は、早めにかかりつけ医に相談しましょう。
・夜尿に加えて昼間に尿や便を漏らす場合は、泌尿器科系の病気が隠れている可能性があります。年齢に関係なく、かかりつけ医に相談してください。


３．原因とタイプ
夜尿の原因は、膀胱容量（膀胱に貯めることができる尿量）よりも睡眠中に作られる尿の量が多いことが原因です。
多尿型：夜間に作られる尿量が多すぎるタイプ。膀胱容量は正常。
膀胱型：膀胱容量が少ないタイプ。夜間尿量は正常。
混合型：夜間尿量が正常より多めで、膀胱容量が正常より少なめ。

夜間尿量の測定法
1)寝る前にトイレに行き、膀胱を空っぽにします。
2)乾いた紙おむつの重さを測定後、おむつをして寝ます。
3)朝、濡れた紙おもつの重さを測り、乾いたおむつとの差をメモします。
4)朝一番のおしっこの重さ(量)を測ります。
5)3と4を足したものが、夜間尿量です。
小学校1−3年生で200ml以下、4年生以上で250ml以下が正常です。
尿量が多い場合は、夕方から寝るまでの水分制限で改善することが多いです。


４．夜尿はいつまで続くのでしょうか？
ほとんどは軽症者で、生活指導だけで１−２年で改善します。しかし、年齢が高いほど、夜尿の回数が多いほど、夜尿の量が多いほど、昼間に我慢できる尿量が少ないほど、治療期間が長くなります。重症者では薬剤などを使用しても５−６年以上かかることもあります。


５．記録が大事(おねしょ日記)
タイプの判定、重症度の判定、治療効果の判定など、夜尿症診療では、おねしょの時刻、回数、量、朝一番の尿の濃さなどの記録を続けることががとても重要です。例えば一見改善していないように見えても、寝入りばなのおねしょが減って、夜明けにおねしょをするようになると改善傾向があると判断できます。


６．検査
来院時と早朝起床時の検尿は必ず実施します。朝一番の尿は濃いのが正常です。朝の尿が薄い場合は多尿型で、夕方の水分制限や尿を減らす薬剤が有効の可能性があります。


７．生活改善
起こさない（宿泊学習や修学旅行などを除き、睡眠不足やホルモンバランスの乱れに繋がり逆効果）、怒らない（劣等感を持たせない）、焦らない（気長に構える）ことが3原則です。
１）早寝早起きの規則正しい生活は全ての基本です。
２）睡眠の3時間前からの水分制限は必須です。夕食時の水分は100cc以下にして、その後は水分を摂らないようにします。日中の水分は自由に沢山摂ってかまいません(午後は午前よりも控えめに)。
３）塩分は尿量を増やします。塩辛いもの、スナック菓子などは控えましょう。牛乳の摂りすぎが原因のこともありますので注意しましょう。
４）冷えに注意。冷えると膀胱容量が小さくなります。冬は悪化しやすい傾向があります。
５）治そうとする意欲が大事。本人と一緒に記録をつけたり、少しでも改善したら褒めてあげるなど、家族が上手に励ましながら、長続きするようにしましょう。
６）便秘に注意、便秘が夜尿の原因になっていることがあります。1週間の排便が3回未満、毎日排便があっても排便時に痛みがある、太い便あるいはコロコロ便などあれば、便秘の治療優先です。


８．治療
生活改善で様子を見ても改善しない場合には薬物などによる治療を検討します。
１）抗利尿ホルモン剤：就寝前の舌下錠により夜間尿量を減らします。水分摂取が多いと水中毒という副作用（倦怠感、頭痛、悪心・嘔吐等）が出ますので、夕方から寝るまでの水分制限が正しくできていることが必要です。
３）アラーム療法：夜尿の出始めにアラームで刺激し覚醒させることで排尿にブレーキをかけて膀胱容量を増大させます。夜尿の前や後に起こすのとは違います。有効率は高いのですが、家族の協力が必要です。また、アラームは7000円程度で、保険が効きません。


9.お泊りの時は？
お泊りの時だけ特別な対応で良いです。
1)他の子どもに気付かれないようにそっと起こしてもらいましょう。
2)朝、早めに様子を見てもらい、失敗ししていたら、他の子が起きる前に着替えさせましょう。
3)薬を持って行っても良いですが、水分制限が難しい時は内服は中止します。
4)夕方からの水分制限は、できれば継続しましょう。


10．相談は気軽に、治療は気長に
おねしょを誰にも言えず、どこに相談したら良いか分からず、密かに悩んでいる親子は少なくありません。夜尿症は排尿機能の未成熟が原因の病気であり、親の しつけ不足でも、こどもの責任でもありません。成長と伴に自然治癒することが多いですが、一部の人は思春期以降も症状が続くことがあり、学校生活や社会生 活で困ることが少なくありません。直ちにおねしょが無くならなくても、原因がわかり、対処法が分かれば、毎日のストレスが減ると思います。ほっておかずに 気軽に相談してください。